TAX REFORM DIGEST

令和7・8年度改正のうち、
関与先の処理が変わるもの

改正項目の網羅ではなく、記帳・年末調整・申告の手当てが実際に要るものに絞り、適用関係・判定単位・根拠条項・立法趣旨まで整理したもの。趣旨を併記しているのは、関与先への説明にそのまま使えるようにするため。

作成 2026年9月2日 収録 令和7年度・令和8年度改正/進行中の消費税減税 項目 8件
飲食料品に係る消費税率の引下げは、令和8年8月5日の臨時閣議で基本方針が決定した段階であり、本稿作成時点で法案は成立していない。制度内容は今後の大綱・法案により変わりうる。

施行カレンダー

令和8年9月を基準に、前後の適用開始日を並べたもの
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令和7年2025
基礎控除・給与所得控除の引上げ(令和7年分〜)
特定親族特別控除 施行
令和8年2026
少額減価償却資産 40万円未満防衛特別法人税 課税開始
消費税1% 基本方針 閣議決定
現在地
インボイス経過措置 70%へ
令和9年2027
貸付用不動産の評価 見直し青色申告特別控除 75万円区分(令和9年分〜)
飲食料品 消費税1%(法案未成立)
令和10年2028
インボイス経過措置 50%へ
令和11年2029
飲食料品 消費税8%へ復帰(予定)少額減価償却資産の特例 期限(3/31)
令和12-13年2030-31
R12.10 経過措置 30%へR13.10 経過措置 廃止
適用済み 直近・要対応 決定済み・これから 法案未成立

月は適用開始月に置いている。事業年度単位で適用されるものは、その月以後に開始する事業年度から。

これから変わること

先に押さえておくもの
令和8年10月1日1か月後
インボイス経過措置が70%に決定済み
当初は50%に下がる予定だったところ、令和8年度改正で70%に緩和された。あわせて一の相手方ごと年1億円の上限が新設。
令和9年1月1日以後の相続等
貸付用不動産・不動産小口化商品の評価の見直し決定済み
取得後5年以内の貸付用不動産は通常の取引価額により評価。生前対策の設計を組み直す必要がある。
令和9年分個人の確定申告
青色申告特別控除の見直し決定済み
e-Tax申告+優良な電子帳簿の保存で75万円、e-Tax申告のみで65万円。書面申告は10万円に下がる。 現在55万円区分で書面申告している関与先は、令和9年分までに電子申告へ移す必要がある。
令和9年4月1日2年間の時限
飲食料品に係る消費税率の1%への引下げ法案未成立
秋の臨時国会に法案提出の方針。施行日をまたぐ取引の経過措置が最大の論点。
令和11年3月31日適用期限
少額減価償却資産の特例の期限決定済み
令和8年度改正で3年延長された期限。延長の可否は令和11年度改正で判断される。
令和13年10月1日制度の完成
免税事業者等からの課税仕入れの控除が全面廃止決定済み
登録のない支払先との取引条件は、この日を終点として逆算して詰めることになる。

項目別の適用関係・立法趣旨・実務論点

影響の大きい順
1か月後消費税全関与先

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の見直し

適用開始
令和8年10月1日以後に行う課税仕入れ
判定単位
控除割合は課税仕入れを行った日。1億円基準はその年又は事業年度ごと、かつ一の相手方ごと
根拠
平成28年改正法附則52・53(令和8年度改正による)
立法趣旨

インボイス制度の導入時に設けられた激変緩和措置について、免税事業者との取引に生じている負担が想定より重いことを踏まえ、縮小のペースを緩めたもの。当初は令和8年10月から50%に下がる予定だったが、最終的な廃止時期を2年延ばしたうえで、70%・50%・30%と刻みを細かくした。

一方で1億円基準は逆方向の改正で、上限を10億円から1億円に引き下げている。本来は小規模な取引先を抱える事業者の負担緩和として設けた措置が、規模の大きい事業者にも及んでいたことの是正。緩和と厳格化が同じ改正に同居している点が、この項目の性格を分かりにくくしている。

令和8年10月以後の控除割合 改正前の予定 50%———70%
80%
〜R8.9.30
改正前も80%
70%
R8.10〜R10.9
改正前は50%
50%
R10.10〜R12.9
改正前は50%
30%
R12.10〜R13.9
改正前は終了
なし
R13.10〜
2年延長後の終点

改正前は令和11年9月末で経過措置が終了する予定だった。最終期限は令和13年9月末まで2年延びている。

1億円基準は、一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年又は事業年度で1億円を超える場合に、その超える部分について経過措置を適用しないというもの。全社合計ではなく相手方ごとの判定である点に注意を要する。

実務上の論点
  • 会計ソフトの税区分の切替日。弥生・マネーフォワードとも80%控除用の税区分が残ったままだと控除超過となる。令和8年10月1日を境に差し替える
  • 判定は課税仕入れを行った日。9月納品・10月請求のように請求日とずれるものは、仕入れの日で区分する
  • 3月決算法人は一事業年度内に80%と70%が混在する。申告書付表の集計を期中で分ける
  • 顧問先への説明では「厳しくなった」ではなく「当初予定より緩んだが、いずれ無くなる」と伝えるのが正確。単価交渉の必要性はむしろ2年後ろ倒しになった
  • 令和13年10月の全面廃止を終点に、登録を求めるか単価を見直すかの交渉時期を逆算しておく

出所:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度関係)」財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

適用中法人税・所得税全関与先

中小企業者等の少額減価償却資産の特例が40万円未満に拡充、人数要件は縮小

適用開始
令和8年4月1日以後に取得し、かつ同日以後に事業の用に供したもの
判定単位
事業年度単位ではなく資産ごと。同一事業年度内に30万円基準と40万円基準が混在する
適用期限
令和11年3月31日まで(3年延長)
根拠
措法67の5(法人)、措法28の2(個人)
立法趣旨

物価上昇により、30万円という単価基準が実勢に合わなくなったことへの対応。基準額が据え置かれたままだと、以前は一括で経費にできた同等の資産が資産計上に回り、実質的に制度が縮小してしまう。金額の引上げは制度の目的を維持するための調整という位置づけ。

従業員数要件の引下げ(500人以下→400人以下)は別の趣旨で、中小企業向けの措置が規模の大きい法人にまで及んでいる状態の是正。近年の改正では、中小企業向け特例の拡充と対象の絞り込みをセットで行う組立てが続いている。

損金算入できる取得価額 30万円未満———40万円未満

青色申告書を提出する中小企業者等が取得した減価償却資産のうち取得価額40万円未満のものについて、事業供用年度に全額を損金算入できる。年間の合計取得価額300万円という上限は据え置きのため、1件あたりの枠が広がった分、枠の消化は早くなる。従業員数要件は500人以下から400人以下へ(適用除外事業者に該当する場合は300人以下)。

実務上の論点
  • 取得と事業供用の双方が令和8年4月1日以後であることが要件。3月末納品・4月稼働は取得日が改正前のため30万円未満で判定する。検収日・稼働開始日の記録が要る
  • 10万円未満の少額資産、20万円未満の一括償却資産(法令133の2)との分岐点は変わっていない。40万円への引上げは本特例のみ
  • 年300万円の枠は事業年度が1年未満の場合に月数按分される。枠は取得価額の大きい資産から充てるのが有利
  • 本特例の適用資産は償却資産税の課税対象。取得価額が上がった分だけ地方税の負担が増え、20万円未満の一括償却資産との選択で有利不利が逆転する場面がある
  • 国税庁タックスアンサー No.5408 は本稿作成時点で改正前の内容のまま。金額の確認は財務省の大綱等による

出所:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」同 大綱本文(令和7年12月26日 閣議決定)

要追跡消費税飲食・小売法案未成立

飲食料品に係る消費税率の1%への引下げ(時限措置)

適用予定
令和9年4月1日から2年間(令和11年4月1日に8%へ復帰する予定)
対象
現行の軽減税率の対象品目(飲食料品。外食・酒類を除く)
現在の段階
令和8年7月30日 方針表明 → 8月5日 臨時閣議で基本方針決定 → 9月に大綱 → 秋の臨時国会に法案提出の方針
立法趣旨

物価上昇に対する家計の下支えを目的とする時限措置。給付ではなく税率の引下げを選んだのは、支給事務を伴わず即時に効果が及ぶこと、また対象を飲食料品に絞ることで所得の低い層ほど負担軽減の割合が大きくなることによる。

2年の時限としているのは、消費税が社会保障の財源に充てられているため恒久的な引下げが財源上難しいこと、および物価の動向を見て判断する余地を残すことによる。制度創設以来はじめての税率引下げとなる。

軽減税率対象品目の税率 8%———1%

実現すれば、標準税率10%・軽減税率1%の2区分に加え、経過期間の処理により10%・8%・1%が併存する期間が生じる。軽減税率の対象範囲そのものは現行の定義を用いる方向とされており、外食と持ち帰りの判定が現在の2%差から9%差に拡大する。

実務上の論点(成立を前提とした先読み)
  • 施行日をまたぐ取引の適用税率。資産の譲渡等を行った日で判定する原則に加え、旧税率を適用する経過措置(請負・リース・通信販売等)が置かれるかが最大の論点。平成26年・令和元年の税率改正時と同様の指定日方式が採られるかを大綱で確認する
  • 売上げに係る対価の返還等・貸倒れの回収は、その基となった課税売上げの税率による。施行日後に生じても従前の8%で処理する場面が出る
  • 簡易課税・2割特例の適用事業者は売上げ側の税率変更がそのまま納付税額に響く。第二種・第三種の関与先で試算が要る
  • 税率引上げ時と逆方向の駆け込みが起きる。棚卸資産の税額調整は税率変更では働かないため、期ズレによる損得は生じない旨を説明できるようにしておく
  • レジ・受発注・会計ソフトのマスタ改修が同時に走る。複数税率対応の補助金の有無が論点になりうる

出所:令和8年8月5日 臨時閣議決定(基本方針)。法案未成立につき、条文ベースの確認は大綱公表後に行うこと。

令和9年分〜所得税個人の関与先

青色申告特別控除の見直し(75万円区分の新設と、書面申告の減額)

適用開始
令和9年分の所得税から
控除額
e-Tax申告+優良な電子帳簿の保存で75万円/e-Tax申告のみで65万円/書面申告は10万円
立法趣旨

記帳水準の向上と電子化の促進。青色申告特別控除は、正確な記帳を行う者への誘因として設けられている制度であり、その誘因を「電子帳簿の質」に紐づけ直したもの。控除額を上げる一方で、書面申告を大きく減額することで、実質的に電子申告への移行を促す設計になっている。

現行は、e-Tax申告または優良な電子帳簿の保存で65万円、それ以外の正規の簿記で55万円、簡易な記帳で10万円という区分。改正後は55万円の区分がなくなり、書面申告は一律10万円となる。現在55万円で申告している関与先は、令和9年分で控除が45万円減ることになる。

実務上の論点
  • 影響が最も大きいのは、いま書面で55万円控除を受けている関与先。事務所単位で該当者を洗い出し、令和9年分の申告までにe-Tax対応を済ませる必要がある
  • 75万円区分には「優良な電子帳簿」の要件(訂正削除の履歴、帳簿間の相互関連性、検索機能)を満たす必要がある。会計ソフトの設定と、あらかじめの届出が要る
  • 優良な電子帳簿の届出は適用を受けようとする年分の申告期限までに提出する必要があるため、令和9年分に間に合わせるには準備の着手が早い
  • 電子帳簿保存法の対応状況と一体で確認する。電子取引データの保存要件を満たしていない関与先は、そちらから手を付ける

出所:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

適用中所得税・住民税年末調整

基礎控除・給与所得控除の引上げと、特定親族特別控除の創設

適用開始
所得税は令和7年分から(特定親族特別控除の施行は令和7年12月1日)。個人住民税は令和8年度分から
根拠
所法86(基礎控除)、所法28(給与所得控除)、所法84の2・所令217の3(特定親族特別控除)
立法趣旨

物価上昇のもとで課税最低限が据え置かれていたことの是正と、就業調整(いわゆる年収の壁)の解消。名目賃金が上がると、実質的な購買力が変わらなくても課税対象が増える。基礎控除・給与所得控除の引上げはこの目減りを戻すもの。

特定親族特別控除は別の問題への対応で、扶養から外れた瞬間に控除がゼロになる「崖」をなくすために設けられた。学生アルバイトが控除の喪失を避けて働く時間を抑える行動が、人手不足のもとで問題視されていた。配偶者について先に導入されていた配偶者特別控除と同じ考え方を、大学生年代の親族に広げたもの。

基礎控除と給与所得控除の引上げにより、給与収入160万円以下では所得税額が生じない。同一生計配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件は48万円から58万円(給与収入103万円→123万円)へ。あわせて19歳以上23歳未満の親族について特定親族特別控除が創設された。所得税の控除額は次のとおり。

特定親族の合計所得金額給与収入のみの場合控除額(所得税)
58万円超 85万円以下123万円超 150万円以下63万円
85万円超 90万円以下150万円超 155万円以下61万円
90万円超 95万円以下155万円超 160万円以下51万円
95万円超 100万円以下160万円超 165万円以下41万円
100万円超 105万円以下165万円超 170万円以下31万円
105万円超 110万円以下170万円超 175万円以下21万円
110万円超 115万円以下175万円超 180万円以下11万円
115万円超 120万円以下180万円超 185万円以下6万円
120万円超 123万円以下185万円超 188万円以下3万円

なお令和8年度税制改正では、いわゆる「年収の壁」への対応として課税最低限を178万円まで引き上げる方向が示されている。

実務上の論点
  • 控除額を住民税の額と取り違えない。個人住民税の特定親族特別控除は最大45万円(特定扶養控除と同額)。解説記事では住民税の額が混在していることがある
  • 令和7年12月1日施行のため令和7年分の年末調整で適用する。「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の回収が要る
  • 判定は合計所得金額であり給与収入ではない。給与以外の所得がある学生は、給与収入の目安表で判定すると誤る
  • 社会保険の被扶養者の基準は税制と連動していない。130万円(106万円)の壁は別に残る。関与先への説明では税と社会保険を分けて示す
  • 扶養控除等申告書の様式・記載区分が変わっている。前年の様式の流用は不可

出所:国税庁 タックスアンサー No.1177 特定親族特別控除国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等」

適用中法人税全法人

防衛特別法人税の課税開始

適用開始
令和8年4月1日以後に開始する事業年度
課税標準
課税標準法人税額(基準法人税額 − 基礎控除額 年500万円)
税率
4%
立法趣旨

防衛力の抜本的強化に必要な財源の確保。法人税・所得税・たばこ税の3税で財源を賄う枠組みのうち、法人税分として設けられた附加税。年500万円の基礎控除を置いているのは、負担を担税力のある法人に限り、中小法人に及ばないようにするためで、これにより課税対象は全法人の一部にとどまる。

法人税額を課税標準とする附加税。基準法人税額から年500万円の基礎控除を行うため、法人税額が500万円以下であれば納付税額は生じない

実務上の論点
  • 基礎控除額は月数按分される。事業年度が12か月に満たない法人(設立初年度・決算期変更)は500万円をそのまま使えない
  • 基準法人税額は所得税額控除・外国税額控除を適用する前の法人税額による
  • グループ通算制度を適用している場合の計算単位を確認する
  • 申告書別表が追加される。申告ソフトの対応版を最初の該当決算の前に確認しておく
  • 法定実効税率が変わるため、繰延税金資産・負債の再測定が必要になる法人がある

出所:財務省「令和7年度税制改正」パンフレット

令和9年〜相続税・贈与税資産税

貸付用不動産および不動産小口化商品に係る財産評価の適正化

適用開始
令和9年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得する財産の評価
対象
被相続人等が相続開始前5年以内に対価を伴う取引により取得した貸付用不動産、および不動産小口化商品(取得時期を問わない)
立法趣旨

市場価格と相続税評価額の乖離を利用した節税への対応。財産評価基本通達による評価は、大量の案件を画一的に処理するための簡便法であり、時価との一定の開きは制度上許容されてきた。しかしその開きを目的として相続直前に不動産を取得する行為が広がり、同じ資産規模でも取った手段によって税負担が大きく変わる状態が生じていた。

令和5年のマンション通達(居住用の区分所有財産の評価)に続く見直しで、課税の公平を保つ方向の一連の改正と位置づけられる。5年という期間を区切っているのは、事業として継続的に不動産を保有する行為と、相続直前の一時的な取得とを分けるため。

取得後5年以内の貸付用不動産は課税時期における通常の取引価額により評価する。5年を超えるものは従前どおり、建物は固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)、土地は自用地としての価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)による。不動産小口化商品は取得時期にかかわらず通常の取引価額により評価する。

実務上の論点
  • マンション通達との適用関係(区分所有の賃貸マンションはどちらによるか)を通達で確認する
  • 「対価を伴う取引により取得」に相続・贈与による取得は含まれないと解される。二次相続の取扱いを個別に確認する
  • 5年の起算は取得の日。令和9年1月1日より前の相続には及ばない。既往の取得案件は取得時期を一覧化しておく
  • 「通常の取引価額」の疎明資料をどう備えるかが実務の中心になる。不動産鑑定評価の要否の基準を早めに整理する

出所:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」

概要令和8年度改正

令和8年度改正のその他の柱

  • 設備投資促進税制の創設 税額控除限度額は法人税額の20%。控除限度超過額は一定の要件のもと3年間繰越し
  • 研究開発税制「戦略技術領域型」の創設 控除上限は法人税額の10%、3年繰越し
  • 賃上げ促進税制の見直し 適用要件・上乗せ要件・控除率の改正
  • 暗号資産取引に係る課税の見直し 譲渡益の課税方式の変更
  • 国境を越えた電子商取引に係る消費税の課税の見直し プラットフォーム課税の対象範囲等
  • 2割特例の見直し インボイス発行事業者となる小規模事業者に係る経過措置

出所:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」